経営戦略の必要性 ③

経営戦略(事業計画)を作るもう一つの大きな目的(メリット)は、「経営者の意識を変える」もしくは、「経営者の意識を合わせる」ことにあります。もちろん、事業計画をつくれば、「ビジョンが明確になる」、「アクションプラン(行動計画)を実行できるようになる」というメリットもあるのですが、これらは事業計画の中に必ず記載する内容なので、いわば言うまでもないことです。こうしたメリットももちろん大切なのですが、それ以上に、事業計画を作る過程を通じて、もしくは作らなければと考えることによって、経営者の意識が変わるということがとても大きな意義を持つと思います。

例えば、日々慌ただしく目の前の仕事を捌くだけだったけれど、自分なりに一生懸命働き続けてきた、その自負はあると思っていても、いざ財務内容を専門家に診てもらって正しく評価してもらうと、ほとんど会社に価値(資産)が残っていないことが明らかとなることがあります。これは、中小企業診断士をはじめとする専門家がその企業の実態を明らかにする作業で、専門的な言葉では「デューデリジェンス」と呼ぶプロセスです。ふつう、事業計画を作る際の、最初の段階となります。そのプロセスを経験することで、今までのやり方ではこれからも会社に何も残らない、何かを変えていかなければだめだ、と気づくことがあります。もちろん、経営者さんが、です。

また、「あれもしたい、これもしなくちゃ」と将来やりたいことを次々思い浮かべる経営者もおられます。けれど、いつまでも経ってもそのやりたいことに着手しなかったり、逆に次々に中途半端にトライして、どれもうまくいかなかったりすることがあります。こうした事態は、本当にやるべきことに意識を合わせることができていないから起こるのです。これらはしっかりと自分の頭で考え、文字にすること―つまり、事業計画書にすること―で、必ず避けることができます。

中小企業の場合は特に、経営者の意識と実力で、その会社の命運や企業体質が大きく変わってしまいます。したがって、経営者の意識をより良いものにしておくことが、経営上とても大切なのですが、しっかりとした事業計画書を作ることを通じて、その意識を改善したり、鋭敏にしたりすることができます。

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