経営戦略⑤ 作成時のポイント

経営戦略を作る際のポイント

 

最後に、経営戦略を作る際のポイントについて、確認しておきます。ここでは、①状況判断、②方向性、③留意すべき点の3つをお話したいと思います。

1.状況判断の質を高める

まず、現状を正しく掴むことが何よりも大切です。今回の経営問答では戦時のお話を織り交ぜていますが、その戦時で言えば、敵の戦力はどのくらいなのか、どんな意図を持っているのか、戦場の地形はどうなのか、気象条件はどうなのか、翻って自軍の戦力は? 士気の高さは? といったことを正しく掴まなければなりません。これは、企業経営においてもまったく同じです。その際に気を付けることを3つ挙げます。

①正確であること

言葉で表すと簡単だし、誰もが当然のことだと思うような話です。しかし、実際に行うのは容易ではありません。例えば、先に挙げたガダルカナル戦での日本軍は、常に米軍の戦力を見誤り、地形をも読み間違えて部隊が何度も混乱状況に陥りました。

②客観的に見る

時に―場合によっては、「往々にして」―希望的な観測で物事を見てしまうことがあります。ガダルカナルでの日本軍は、正確に敵の戦力を把握できなかったと前述しましたが、実際には常に敵の戦力を過小評価していました。このようになってしまった大本には、自軍の戦力に対する驕り高ぶりがあったこと(それ以前の戦闘が勝ち戦だったことが影響しています。)と、合理的判断を軽視する風潮の存在があります。

③最悪を想定すること

状況判断をする際には、常に、もし最悪の状況に陥ったら、どうなるのかを想定しておくことが必要です。

2.方向性の決定

 方向性を決めるときには、二つのことを意識します。ひとつは、「合理性」です。そのことを考える前に、まずやるべきことがあります。それは、徹底したSWOT分析です。その分析をもとに、得られた情報を吟味して、その上で合理的に判断することが大切です。

 もう一つ大切なことは、「その企業にとって必然的な判断を下す」ということです。簡単にいえば、やりたくない仕事をするなということです。しかし、そもそも経営理念やビジョンが明確でない会社もあります。こうした会社の場合、やりたい仕事がどんな仕事で、やりたくない仕事がどんな仕事かがよくわかっていない場合もあります。これはまさしく経営者の責任です。

3.その他の留意点

①実抜計画にする

「実抜計画」とは、「実現可能で、抜本的な経営の見直しにつながる計画(戦略)である」ということです。

②数値による根拠が明確

計画はできる限り、数値で根拠を示したり、目指すべき目標の度合いを明確化したりしておきたいものです。

以上、7月は経営戦略について取り上げましたが、とてもこの5回の連載の記述量で書ききれるものではないので、また今後も取り上げる機会があると思います。

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