経営ビジョンについて ② 経営ビジョンとは何か その2

前回の記事で、私なりの経営ビジョンの定義をお伝えしました。「経営ビジョンとは何か」というテーマについて、あと3つお伝えしたいと思っています。

1.経営ビジョンは、理念とともに、人を動かすために必要なもの。

人は、理念や使命感に燃えて行動し、ことを成し遂げる場合があります。理念のパートでご紹介した天野さんは、ご自身が立ち会った実父の心臓手術で、その父を亡くした経験が強い原体験となり、一人でも多く、心臓の病に倒れようとしている命を救うことを使命にされています。さらに、医師という国家資格を得たからには、自分のプライベートな生活はほとんど犠牲にして―具体的には、月曜から土曜日まではずっと病院で寝泊まりして―、その仕事のために、自らの持てる全ての力を捧げておられます。こうしたことができるのは、理念や強い使命感があるからに他ならないと思います。

一方、ビジョンで動く人としては、例えば、先にお伝えしたイチローが挙げられるでしょう。自分が好きな野球をずっと続けていたい、そこに使命が介在する余地はあまりないと思います。それよりも、好きな野球を続けて、最高のフィールドで活躍したい、そのプレーを見てもらってみんなに楽しんでもらいたいという思いがあったのだろうと思います。これは、まさしくビジョンです。

つまり、理念と経営ビジョンは、人や組織を動かすための、2つの強力なエンジンなのです。経営者の皆さんにはぜひ、この2つのエンジンを、会社の中ででフル回転させていただきたいと思います。この2つのエンジンの存在に気付いておられない経営者さんが、とても多いなぁというのが実感です。

もちろん、素晴らしい理念(使命感)とビジョン両方を同時に抱いて、ことを為す人もいるでしょう。例えば、坂本龍馬などは、そんな一人だったのだろうと思います。

ところで、コンサルティングの仕事の一環で、人の能力評価に携わっている経験からすれば、理念(使命感)ベースの人は、どちらかと言えば自らの内面に強い基軸を有する人だと思います。一方、ビジョンベースの人は、どちらかと言えば強い思考力を有する人だと思います。これはあくまで相対的な話で、例えば、理念(使命感)ベースの人は思考力が強くないと言ってるわけではありません。

しかし、両者がかならず持っているもう一つの能力があります。それは、「自律力」です。「自律力」とは、「自分自身が立てた規範に従って、行動し続ける力」です。これがあるから、不断の努力を続けられるし、成果を出し続けられるのだと思います。

記事が長くなってしまったので、あとの二つはまた次のコラムでご紹介したいと思います。

ページ上部へ戻る