経営ビジョンについて⑤  作り方と活用の仕方

経営ビジョンの最後は、その作り方と活用の仕方をお伝えします。

 

1.数値で見える情報と、言葉で語る情報の両方を記載する。

 経営ビジョンを作る時は、単に「何時か、もっと会社を大きくできたらいいなぁ」といったような漠然とした情景を語るのではなく、例えば「大きい」というならどれくらい大きいのか、具体的な数値で示すことが大切です。なぜなら、「大きい」と言いっても、3億円の売上高で大きいと思う人もいれば、売上高が10億円くらいはないと大きいとは言えないと考える人もいるからです。こんなふうに認識が違ったままでは、必ずすぐに様々な行き違いが生まれてしまいます。だから、売上高でもいいし、利益率でもいいし、不良率の低減でもいい、どのようなモノでもいいので、その会社の中で重要なテーマを見つけて、それを数値化して示すことが大切です。

 もう一つは、前に私がお伝えした「好ましい情景」を言葉で描き出すことです。わかりやすい数値で示すことも大切ですが、それだけでは不足感があります。なぜなら、人は感情の生き物だからです。数値だけで、感情を動かすのは難しく、やはり言葉で伝えることが大切だと思います。

 

2.精一杯努力すれば、手が届くものにする

 経営ビジョンは、精一杯努力すれば必ず実現できると思いえるものにしましょう。ただ、もし、「海賊王に、おれはなる!」といったとてつもない夢を持ったとしても、困ることは何もありません。その場合は、いくつかのステップに分けて考えます。つい最近、私がご支援した企業さまの場合、業界1位を目指すというのが社長の言葉から語られたビジョンでした。そこで、第1ステップは、5年後に売上高を2倍にする、第2ステップは10年後で、業界の中で上位企業として認知される位置を確保する。そして、第3ステップは現時点ではいつになるとは言えないが、業界1位を実現している、といったビジョンを作りました。その際の社長さんの目は、ご支援を始める前とは確実に違っていました。

 

3.各部門のビジョンにブレイクダウンする

 全社ビジョンを作ったなら、ぜひそのビジョンを部門毎のビジョンにブレイクダウンしましょう。そして、さらに一人ひとりのビジョンとして理解できるようにしましょう。そうして初めて、現場にいる若い社員やなんだか社長んところに訳の分からないコンサルタントが来ているけど、いったい何をしているんだ!? と思っている古参の社員たちも、動き出すことができるようになります。

 

4.常に、周知徹底する。

 この点は、経営理念と同じです。経営ビジョンの大切さを理解している企業は、それを周知徹底するために、あらゆる努力を払います。例えば、今はとても有名になった星野リゾートさんでは、会社の記念日にコーヒーのマグカップを社員にプレゼントすることがあったそうです。そのマグカップの内側には自社のビジョンがプリントされていて、社員がコーヒーを飲むと毎回、その年のビジョンが目に入ってくるようにしたりしていたそうです。同社では、これを「ビジョナリーカップ」と読んでいます。(出典「星野リゾートの教科書」P156)

 

最後に、中小企業の場合、ぜひ社員を巻き込んで一緒にビジョンを作ることをお勧めします。

今回の経営ビジョンについては以上です。また来月、一緒に考えましょう。

ページ上部へ戻る